短編集「時間旅行者」

即興小説から、お勧め作や、比較的評判の良かったものをサルベージ。
現在のところ、加筆訂正はせず、そのまま載せるつもりです。
また、お題、必須事項、制限時間等も併せて載せます。

「時間旅行者」はかなり初期の頃に書いたものです。2013年3月頃かと。
なんとなく星新一のショートショートの臭いがするかも知れません。


「時間旅行者」
お題:当たり前の能力者 制限時間:15分 読者:73 人 文字数:674字


わたしはついにあの能力を手に入れた。

タイムワープである。

わたしが思い描くことのできる時代になら、いつでも飛べるのだ。
少なくともわたしが学生時代に学んだ時代であれば、ほとんどの時代に飛べることができた。
太平洋戦争時代、幕末、室町・鎌倉時代、平安時代でさえ。

わたしはあらゆる時代に飛んだ。
龍馬の暗殺が実はあんな真実であったなんて、現代ではわたし意外に知るものはいない。また、徳川のあの将軍が実は女性であったなんてことも、わたしだけが知っている。
わたしは歴史の真実を探る旅に没頭した。

しかし、わたしはふとあることに気がついた。
わたしは過去にしか遡れないのだ。

思い描くことのできない未来。
過去であれば、あらゆる資料が残っているため、その資料を読み込むことで、描き出した時代に遡れるのだが、未来に関する資料はない。

しかし、せっかく手に入れたこの能力。なんとしても未来に行ってみたい。

わたしは必死に考えた。何かいい手はないか。

「もしかして…」

未来にもわたしと同じような能力を持って生まれた者がいるかも知れない。その者にこの時代に来てもらい、未来に連れて行ってもらうことはできないか。そう考えたのだ。

わたしは、未来へのメッセージを残した。
この時代に、タイムトラベルのできる者がいると。

そして、ついに、迎えが来た。

そして、その者と一緒に500年後の未来へ向かった。



しかし、残念なことに、その未来は、人間は皆タイムワープができるのであった。

この特別の能力も、当たり前の能力でしかなかったのだ。

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