短編集「完全犯罪」

即興小説から、お勧め作や、比較的評判の良かったものをサルベージ。
現在のところ、加筆訂正はせず、そのまま載せるつもりです。
また、お題、必須事項、制限時間等も併せて載せます。

「完全犯罪」は苦し紛れのオチが意外にウケた作品でした。ある意味反則な結末なんですけどね(笑
ちょっと、星新一風味かも?

「完全犯罪」
お題:犯人は昼 必須要素:犯人は主人公 制限時間:30分 読者:69 人 文字数:939字

 完全犯罪という言葉がある。それは密室を装うことであったり、アリバイ作りであったり、動機のすり替えであったり、物証の消去であったり、様々な方法によって行う。完全犯罪とはつまり、犯罪でありながら、最終的には犯人が分からないことであり、もしくは犯罪自体がなかったことになってしまうことである。
 そういう意味で、わたしは一つの完全犯罪を成し遂げた。

 わたしの名前は昼間唐寝太郎。この物語の主人公であり、完全犯罪の犯人である。いや、この犯罪自体なかったことになるわけだから、犯人とは言えない。わたしが誰かにこの事を話すかしない限りはわたしは犯人とは言われないのだ。何故なら、それは完全犯罪であり、その罪は永遠に知られることはないからだ。
 わたしは年少の頃より、推理小説が大好きで、いつかは完全犯罪を成し遂げようと目論んでいた。それがついにこの年にして完遂することができたのだ。感無量である。いくつもの仕掛けによって、アリバイをつくり、証拠の隠滅も図った。喩え物証が出て、犯罪の欠片が見つかったとしても、犯人を割り出すことは不可能に近い。もちろん、物証が出ることはあり得ない。ミリの単位にまでかけて証拠になりうる物は全て焼却したからだ。万が一出るとしたら、ミクロ単位だが、それを見つけられる者がどこにいるというのか?

 ここまで読んで、あなたはわたしが何の犯罪を犯したのかを知りたいと思うだろう。しかし、それを話してしまっては、完全犯罪にはならないので、わたしは口が裂けても言える訳がない。分かるだろう?
 ん?実は罪など犯してはいないのではないかと疑っているのか?

 仕方ないな。では、君だけに教えてあげよう?但し、三つだけ約束してもらうよ。いいかい?

 一つ目は、わたしがこれから話すことを誰にも言わないこと。

 二つ。わたしの完全犯罪を絶対に真似しないこと。

 いいかい?大丈夫だね?



 …ん?三つめかい?


 三つ目は、君が僕の二つ目の完全犯罪の被害者になることだよ。好奇心は身を滅ぼすて言うじゃないか。だめだよ、すでにここは密室になっているからね。叫んだって誰も来ないよ。よかったじゃないか、わたしの完全犯罪の全てを君は体験することができるんだからね。

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